美術出版社 デザインセンターです。
本ではありませんが、デザインセンターでは美術館の広報のお手伝いとして
下記のようなウェブサイトも制作しています。

東京国立近代美術館 60周年記念サイト
http://www.momat.go.jp/momat60/index.html

こちらは今年60周年を迎える東京国立近代美術館(東近美)の特設サイトです。
東近美を支える方々へのインタビューや、所蔵作品の人気投票、
またこれまでに開催された展覧会のポスターアーカイブなど、
充実したコンテンツとなっています。

紙の本をめくるのもよいですが、
人気投票などインタラクティブな展開ができるのはやはりインターネットならでは。
ソーシャルネットワークのTwitterやfacebookのアカウントも開設されています。

デザインセンターでは、ミュージアムでの展覧会アーカイブという視点から、
カタログといった「本」という形体だけでなく、
こうしたウェブサイトについても今後注目していきたいと思います。
こんにちは。美術出版社 デザインセンターです。
今回は展覧会のデザインについてのお話しです。


愛知県美術館、そして東京国立近代美術館にて開催の
「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」
今回こちらの展覧会カタログを美術出版社 デザインセンターが制作を行いました。
表紙もまさにオールオーヴァー!本の表裏を覆い尽くす作品からも、
アクションペインティングの旗手と言われるポロックの
筆を高らかにふるい画面と格闘する姿を思い起こします。

pollock_book


今回はカタログだけでなく、展覧会のお土産とも言えるグッズのデザインを手がけました。缶バッジや一筆箋、ノートやタンブラーもポロックのポーリング技法で覆われた作品でデザインされています。

Pollock_goods2_s.jpg


こちらの写真奥にあるのはiPhoneカバー。右手前はカードケース。その奥はTシャツです。なかなかハードボイルド?に仕上がりました。

Pollock_goods1_s.jpg


カタログのデザインとこれらのグッズ両方を担当したデザイナー曰く、
「ポロックの世界観を大切に、カタログや展覧会のイメージとつながるようなデザインを心がけました」とのこと。
展覧会を観終わってからも、カタログだけでなくグッズでも余韻に浸れそうです!


こうして、美術出版社 デザインセンターはカタログだけでなく、
展覧会グッズのデザインや制作などのお手伝いもしています。
MBPでは、こうした展覧会を取りかこむさまざまなものにも
今後ますます注目していきたいと思います。



美術出版社 デザインセンターが制作した美術展カタログには、
美術出版社の書籍として書店でも購入できるものがいくつかあります。


photo0202_s.jpg


まずは昨年夏から秋にかけて開催された、ヨコハマトリエンナーレ2011の記録集
「ヨコハマトリエンナーレ2011 OUR MAGIC HOUR 世界はどこまで知ることができるか?」

この本は、会期直前に設置されたインスタレーション作品や
会期中のイベントの模様なども入った、ライブ感あふれる記録集です。
会場に足を運んだ方にも、そして行けなかった方にも楽しんでいただける、
現代のアートシーンの一端がわかる一冊となっています。


現在、府中市美術館で開催中(開催期間:2011年12月10日~2012年2月26日)の
「石子順造的世界 美術発・マンガ経由・キッチュ行」展カタログも書店で販売中です。
このボリュームで2100円は破格値!とも噂されるカタログ、
展覧会は他会場への巡回はないそうなので、展覧会場に足を運べない方には嬉しい一冊です。
(もちろん展覧会を鑑賞してこのカタログで振り返るのが一番ですが…!)


そして神奈川県立近代美術館 葉山でも好評のうちに幕を閉じた
「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト―写真・絵画・グラフィック・アート―」展
これから名古屋、岡山、福島と巡回するにあたり、2月25日より書店でもカタログ販売を展開する予定です。


ほかにも、

「理想の暮らしを求めて 濱田庄司スタイル」
(パナソニック電工 汐留ミュージアムで開催)

「ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち ストリート・ライフ」
(東京都写真美術館で開催)

なども現在書店にて好評発売中です!


ちなみに、こうした書店でお求めいただけるカタログは、
もちろんamazonなどオンラインでも購入可能です。


美術出版社 デザインセンターでは、美術館のニーズに応えながら、
こうしてカタログが購入しやすくなり、展覧会がもっと身近になっていくお手伝いを
重ねていけたらと思っています!
「シンポジウムー展覧会カタログを斬るー」に参加して part 1の続編です。

4名の講師の方々が登壇された後、まとめ対談が行われました。


これからのカタログについて

アートブックvs資料性ではなく「見て楽しく、読んで濃い」カタログであるべき。
商品としても、アーカイブとしても充実が求められる。
忙しさゆえ、掲載論文や、参考文献、年表など机上のデータのみ集めている感がある。もっとしっかり研究、執筆して欲しい。
また、美術批評の場が減っていることも懸念される。雑誌、新聞が伸び悩む中、批評の場をどこか別に設けることで、美術界がよくなっていくのではないか。

...ところで、なぜ展覧会前日の内覧会に間に合わせるようにカタログを制作しなくてはならないのでしょうか。

資料性を高めるためにも時間をとって執筆した方がよいし、図版の色調整も作品と見合わせてできるし、インスタレーションや展示会場の写真、また展覧会に伴うイベントの情報をも盛り込むことで、カタログの資料性がより高まるのでは?という疑問が生まれました。

それに対し、学芸の平井さんは
なぜか日本では、会期のはじまりにカタログがなくてはならないということになっていますね。会期始まってからでもいい気もするのだけど、どこかに締め切りをつくらないと、作らなくなっちゃいそうですからね。
と平井さんらしい、和やかなコメントでシンポジウムは幕を閉じました。


シンポジウムに参加して、私の個人的感想としては、

カタログが研究者の間で、美術の範囲を超え文化を知る上でも重要な資料となっていることに驚き、重要性を再認識しました。しかし、カタログに求められている項目が多岐にわたり増えてしまっていることは喜ばしいことでもあり、大きな問題でもあります。

昔は展覧会の小さな記録集(小冊子)から始まったカタログは、今となっては、美術館の資料としてだけではなく、展覧会の主旨・研究成果を伝え、研究の対象となり、そのうえ一般のお客さんにも買ってもらわないといけない。
勉強もできて、スポーツも万能、料理も洗濯もできちゃう、うえにカッコイイ。そんな人、なかなかいないです。というか、何でもできちゃう人って案外、魅力的に見えなかったりしますよね。

話しは逸れましたが、私たち一般読者が感じている「問題意識」を美術関係者たちも「問題」として同様に感じているにも関わらず解決に結びつけられていない現実が明るみになった気がします。
カタログを魅力的にするには、編集方針のバランスと新しいアイデア、ヒントを見出すことが大切なのかも、とも思いました。というわけで強引なまとめ方ですが、MBP、これからもどんどん活動していきます!

(written by 名塚)
国立新美術館「シンポジウムー展覧会カタログを斬るー」に参加してきました。

研究者、美術展調査、デザイナー、学芸員、
立場の異なる4名からそれぞれ展覧会カタログについて話しをうかがうシンポジウム。
内容が盛りだくさんになってしまったので今回のブログでは、
各40分間の講演内容をかいつまんでご紹介します。

講演1「大学(院)の美術研究と展覧会カタログ」
今橋映子氏(東京大学大学院教授)
東大比較文学会

比較研究の一環として、展覧会カタログ(主に企画展)が重要と考え研究をはじめる。

雑誌『比較文学研究』〈展覧会&カタログ評〉1999年~にて発表。
駒場博物資料室にてカタログを収集、展覧会カタログ評院生委員会にて比較、検討、1年に3, 4冊のカタログを選考し『比較文学研究』にて発表。
主に、展覧会企画の良質さと、研究者にとって大事なポイント(1.比較芸術観点、2.図版の質がいいかどうか、3.参考文献が充実しているか)をカバーしているかで選考。
ちなみに2011年に選ばれたカタログはこちら
 「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」東京都庭園美術館、宇都宮美術館、滋賀県立近代美術館
 「マン・レイ展」国立新美術館、国立国際美術館
 「明治の彫塑 ラグーザと萩原碌山」東京藝術大学大学美術館
 「日本画の前衛 1938-1949」京都国立近代美術館、東京国立近代美術館、広島県立美術館

学生の授業(ゼミナール)にカタログ研究を設けている。
資料室探索から、「私の一冊」を見つけ1人3分の発表を行う。など。
今橋氏の「私の一冊」は
『千代紙いろいろ 小間紙の世界展』2007年 旧新橋停車場 鉄道歴史展示室

〈記憶の場〉としての展覧会カタログの重要さを再確認した震災。
東日本大地震で被災したリアス・アーク美術館について。
カタログによって、美術館の活動、存在が確認できる。
特に『描かれた惨状〔~風俗画報に見る三陸大海嘯の実体~〕』展 2006年のカタログには、三陸大津波をとりあげ、津波の模型も展示、地域の津波災害へ警鐘を鳴らすような学芸員の企画が記されている。



講演2「美術展調査から見た展覧会カタログー『日本の美術展覧会開催実績』を編んで」

中島理壽氏(美術ドキュメンタリスト)

『日本の美術展覧会開催実績』について
日本の主な美術館(約300館)戦後60年間の、美術展の開催記録(約33,000件)を集大成した1600ページの大型書籍美術展の歴史が分かる膨大なアーカイブ。特徴は
 ・展覧会名に一工夫加え、検索の多様性を目指した
 ・展覧会のもう一人の担い手(主催、共催など)も加えることで、主催社の文化史も見ることができる
 ・展覧会カタログの有無、所在情報を付与しているところ。

長年の美術展調査から見た展覧会カタログの大きな流れ
経済的に良かった頃は制作予算の増大と販売部数の拡大
  ↓
デザイン重視(デザイナーの登用が進む。それまでは学芸員が印刷所へレイアウト指示していた。)
  ↓
定型版のカタログ(安価)+特装版(高価)
  ↓
特装版をやめて、定型と一緒に(非定型になり、高価に)
  ↓
非定型化が進む

今の問題点
・美術館の個性が埋没(定型版のカタログがなくなってしまったから)
 ぱっと見ればひと目で、どの美術館のカタログか分かった時代もあった
・形が均一でないため、図書館、資料館で扱いにくい

多くの展覧会カタログは背伸びしている印象がある。
美術展の多さ、制作時間の短さによる安易な編纂、質の低下などなど


講演3「展覧会の記憶をかたちにする」
近藤一弥氏(グラフィック・デザインナー、東北芸術工科大学教授)

キュレーターからコンセプト、企画の意図を聞いてからデザイン。
内容そのものが重要であり、本の形はその後にできる。
展覧会がホワイトキューブの中で行われるように
本の中でコンセプトをまとめ、もう一度違った形で再生させる。
メディアが異なるだけで、コンセプトは同じ。

多数、デザインされたカタログを紹介いただく。
http://www.kazuyakondo.com/main/main.html



講演4「展覧会企画と展覧会カタログ」

平井章一氏(国立新美術館情報資料室長・主任研究員)

カタログ制作の目的
購入者:記念品、感動・記憶を呼び戻す、より深く理解するため
企画者:主旨を表現するもう一つの場、展覧会の記録(インスタレーションを含めて)、調査・研究の発表の場として

ジレンマ
1.アートブックと資料性の兼ね合い
2.商品としての側面があり、表現したかった主旨が見えなくなることもある。インスタレーションが記録できないことも。
3.研究を広げていきたい(世界にも。そのために新美のカタログは必ず翻訳を付けている)

制作のプロセスを紹介
予算確保
  ↓
編集方針と展覧会の意図、イメージをどう伝えるのか決定
  ↓
カタログの構成の検討
  ↓
デザイナーの選定と協議
  ↓
図版の収集、著作権処理、論文など執筆、翻訳、校閲、校正などなど


それぞれの立場からのお話し、とても興味深く考えさせられました。
もっとたくさんお話しを伺ったのですが、今回はカタログの内容に限って書いてみました。
この後行われた、4名そろっての討議と私の感想はpart 2にてご報告いたします。
(written by 名塚)

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Author:bssmbp
美術展のカタログ、宣伝物、作品集などの制作をてがける美術出版社 デザインセンターによる、ミュージアムと本との関係を考えるプロジェクトです。

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