国立新美術館「シンポジウムー展覧会カタログを斬るー」に参加してきました。
研究者、美術展調査、デザイナー、学芸員、
立場の異なる4名からそれぞれ展覧会カタログについて話しをうかがうシンポジウム。
内容が盛りだくさんになってしまったので今回のブログでは、
各40分間の講演内容をかいつまんでご紹介します。
講演1「大学(院)の美術研究と展覧会カタログ」今橋映子氏(東京大学大学院教授)
東大比較文学会比較研究の一環として、展覧会カタログ(主に企画展)が重要と考え研究をはじめる。
●雑誌『比較文学研究』〈展覧会&カタログ評〉1999年~にて発表。
駒場博物資料室にてカタログを収集、展覧会カタログ評院生委員会にて比較、検討、1年に3, 4冊のカタログを選考し『比較文学研究』にて発表。
主に、展覧会企画の良質さと、研究者にとって大事なポイント(1.比較芸術観点、2.図版の質がいいかどうか、3.参考文献が充実しているか)をカバーしているかで選考。
ちなみに2011年に選ばれたカタログはこちら
「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」
東京都庭園美術館、宇都宮美術館、滋賀県立近代美術館 「マン・レイ展」
国立新美術館、国立国際美術館 「明治の彫塑 ラグーザと萩原碌山」
東京藝術大学大学美術館 「日本画の前衛 1938-1949」
京都国立近代美術館、東京国立近代美術館、広島県立美術館●学生の授業(ゼミナール)にカタログ研究を設けている。
資料室探索から、「私の一冊」を見つけ1人3分の発表を行う。など。
今橋氏の「私の一冊」は
『千代紙いろいろ 小間紙の世界展』2007年 旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
●〈記憶の場〉としての展覧会カタログの重要さを再確認した震災。
東日本大地震で被災したリアス・アーク美術館について。
カタログによって、美術館の活動、存在が確認できる。
特に『描かれた惨状〔~風俗画報に見る三陸大海嘯の実体~〕』展 2006年のカタログには、三陸大津波をとりあげ、津波の模型も展示、地域の津波災害へ警鐘を鳴らすような学芸員の企画が記されている。
講演2「美術展調査から見た展覧会カタログー『日本の美術展覧会開催実績』を編んで」中島理壽氏(美術ドキュメンタリスト)
●『日本の美術展覧会開催実績』について
日本の主な美術館(約300館)戦後60年間の、美術展の開催記録(約33,000件)を集大成した1600ページの大型書籍美術展の歴史が分かる膨大なアーカイブ。特徴は
・展覧会名に一工夫加え、検索の多様性を目指した
・展覧会のもう一人の担い手(主催、共催など)も加えることで、主催社の文化史も見ることができる
・展覧会カタログの有無、所在情報を付与しているところ。
●長年の美術展調査から見た展覧会カタログの大きな流れ
経済的に良かった頃は制作予算の増大と販売部数の拡大
↓
デザイン重視(デザイナーの登用が進む。それまでは学芸員が印刷所へレイアウト指示していた。)
↓
定型版のカタログ(安価)+特装版(高価)
↓
特装版をやめて、定型と一緒に(非定型になり、高価に)
↓
非定型化が進む
●今の問題点
・美術館の個性が埋没(定型版のカタログがなくなってしまったから)
ぱっと見ればひと目で、どの美術館のカタログか分かった時代もあった
・形が均一でないため、図書館、資料館で扱いにくい
多くの展覧会カタログは背伸びしている印象がある。
美術展の多さ、制作時間の短さによる安易な編纂、質の低下などなど
講演3「展覧会の記憶をかたちにする」近藤一弥氏(グラフィック・デザインナー、東北芸術工科大学教授)
キュレーターからコンセプト、企画の意図を聞いてからデザイン。
内容そのものが重要であり、本の形はその後にできる。
展覧会がホワイトキューブの中で行われるように
本の中でコンセプトをまとめ、もう一度違った形で再生させる。
メディアが異なるだけで、コンセプトは同じ。
多数、デザインされたカタログを紹介いただく。
http://www.kazuyakondo.com/main/main.html
講演4「展覧会企画と展覧会カタログ」平井章一氏(国立新美術館情報資料室長・主任研究員)
●カタログ制作の目的
購入者:記念品、感動・記憶を呼び戻す、より深く理解するため
企画者:主旨を表現するもう一つの場、展覧会の記録(インスタレーションを含めて)、調査・研究の発表の場として
●ジレンマ
1.アートブックと資料性の兼ね合い
2.商品としての側面があり、表現したかった主旨が見えなくなることもある。インスタレーションが記録できないことも。
3.研究を広げていきたい(世界にも。そのために新美のカタログは必ず翻訳を付けている)
●制作のプロセスを紹介
予算確保
↓
編集方針と展覧会の意図、イメージをどう伝えるのか決定
↓
カタログの構成の検討
↓
デザイナーの選定と協議
↓
図版の収集、著作権処理、論文など執筆、翻訳、校閲、校正などなど
それぞれの立場からのお話し、とても興味深く考えさせられました。
もっとたくさんお話しを伺ったのですが、今回はカタログの内容に限って書いてみました。
この後行われた、4名そろっての討議と私の感想はpart 2にてご報告いたします。
(written by 名塚)